消えた風景

 北海道を代表する美しい風景のひとつに道央の美瑛の丘があります。
なだらかで優しい曲線の重なり合う丘、丘、丘・・・・その丘にびっしりと畑が・・・これもまた幾重にも広がっています。
ただ丘で作物を作っているだけなのですが、その作物の種類により色合いが異なりますので、その様はまるでパッチワークを敷き詰めたようです。
そして、連作を避けるために作物の作られる場所が毎年変わり、パッチワークの様子もまた毎年同じではありません。

 その畑しかない丘に、たまにポツンと木が佇んでいる風景は、とても印象的で人の心を癒します。
背景に十勝連邦が広がっていて、四季を問わずその美しい景色を求め多くの写真家が訪れました。
それがカレンダーなどに使用されたり、マスコミで紹介されたりですっかり有名になり、今では知らない人はいない程になってしまいました。
道内外から訪れる多くの観光客の心を魅了しています。
この自然や風景の虜になって、本州からこの地に移住された方々も少なくないようです。

 皆がスマホや携帯電話を持つようになった現代は老若男女みなカメラマン化し、少しでも良いアングルをさがそうとします。
そこで問題となるのがマナーの問題。
これらの景色(畑)は個人の持ち物で、生活の糧なのです。
勝手に畑に入り込んだり、止めてあるトラクターに上ったりするカメラマンが後を絶たず・・・
マナー違反が増えるに従い立ち入り禁止の看板やロープを張ったりも増える一方で、景観を損なっていることは承知で致し方ない対策だと思います。

 写真を撮るだけで、別に畑の作物を傷めたりしないよう気遣っているのに・・・と思う人がいるかも知れませんが、農家さんにとっては大変なことなのです。
センチュウという害虫が農作物に感染し被害をもたらします。
靴底やタイヤなどに付着した害虫が畑を崩壊させる危険性があります。
美瑛のみならず道内各地で 「畑に入らないでください」 という看板をあちこちで良く見ます。
親切にその理由も記しているところもあって、そこで私も 「そうだったのかぁ」と理解することできました。

 この度、美瑛の美しい風景のひとつが失われてしまいました。
「哲学の木」を撮りに来る観光客に抗議の意味で、その持ち主が赤いスプレーで大きな×印をふたつその幹に印したそうです。 
「哲学の木」を撮影禁止にし、観光マップからも外したり・・・それでもマナーの悪い人々が絶えないため、ついに木を切る決断をせざるを得なかったようです。
再び眺めることのできなくなってしまったあの美しい景色・・・本当に残念で哀しいことです。
ただ、もうこれ以上他の木々にも同じようなことが起こらないよう・・・ひたすら祈る思いです。

 私たちはつい、外国人観光客のマナーの悪さを批判したりしてしまいますが、まず自分たちから反省すべきだと思います。
旅に出るときは「そこへお邪魔させていただいている 」 と言う意識を持って出かけなくては・・・改めて自分に言い聞かせています。

                   流氷接岸人工知能