江差線に乗る 

 かつては北海道内にも数多くあったローカル鉄道・・・赤字で次々と廃止され、ついに江差線も2014年5月12日に、木古内〜江差間の廃止が予定されています。
江差は北海道南西部に位置し、民謡の王様と言われる江差追分の発祥地として知られています。
函館市、松前町と並び、北海道で最も早く開けた地です。

 江戸時代のニシン漁の最盛期には日本海航路の北前船の交易で人口3万人を超えニシンがやってくる5月は青森、秋田、山形方面からの出稼ぎの方も多く、「江差の5月は江戸にもない」といわれるほどの繁栄を極め、伝統芸能や生活文化などの有形・無形遺産が数多く伝承・保存されています。

 そんなわけで廃止前にぜひ乗っておきたいと、函館へ2泊3日の旅に出かけました。
晴れ女の私・・・今回も悪天候の間に挟まれた快晴・・・お天気に恵まれる幸運に感謝。

 函館〜江差間は1日6往復の列車運行で、たった1両が基本とのことですが、廃止の発表後は鉄道ファンや観光客が増え、最近は2両編成で運行されたりしています。
朝食も取らず早々とホテルを出て、函館発江差行普通列車6:53に乗車し江差着9:17 (木古内で函館〜青森の特急列車待ち有り)。
手つかずの自然の中を走ること・・・特に車窓からの美しい紅葉が人気ですが、もう10日ほど早かったらさぞきれいだったと思われました。
それでもあちこちの山々の黄金色に輝く針葉樹林はとても美しく映りました。

     
趣あるたたずまいが続く いにしえ街道の街並み  写真 : この海辺は埋め立てられ今は国道に  函館ベイエリアの顔・金森赤レンガ倉庫群・夜はライトアップ

 駅でいただいた観光用の江差マップを片手に、いにしえ街道を目指し駅から歩くこと20分ほど。
隆盛を極めた頃の問屋蔵、商家、町屋、社寺などの建造物が海岸線沿いの下町に多く残されていて、これらの歴史的建造物を後世に伝えようと「いにしえ街道」としたそうです。
新築されたと思われる民家も商店も集会所も、街並みの雰囲気に合わせた造りで違和感なく、懐かしく情緒ある落ち着いた雰囲気でした。

 まずは横山家を。( 北海道指定有形民俗文化財 )
初代から現在まで200年以上の歴史があり、現在8代目当主が住んでおられます。
現在の建物は今から約160年前に建てられた家屋。
玄関は、いにしえ街道に面していますが、奥行きは海沿いの国道まで坂になって・・・母屋の後ろに一番蔵から四番蔵、そしてハネダシへと続きます。
全長100m弱もありそう。 ウナギの寝床と言われる京都の町屋の建築様式を思い出しました。

 一番蔵は現在も使われていて、えんじ色の漆塗りで分厚く、とても立派なものでした。
四番蔵は資料室となっていて往時がしのばれる数々の品が展示されています。
昔は、ハネダシまでが海だったそうです。
沖に停泊させておいた大きな北前船から小さな船に荷物を移し、海側の家屋が突き出たハネダシまで運んだのだそうです。
展示されていている昔の海辺の写真は、本州の伊根町の舟屋が並ぶ風景とそっくりでした。
今は埋め立てられ国道となってしまいましたので・・・いにしえ街道が旧国道・・・海岸沿いの景色は全く変わってしまいました。

 隣接する食事処でニシンそばをいただきました。

 次は旧中村家へ。( 国指定重要文化財 )
江戸時代から海産物の仲買商を営んでいた近江商人の大橋宇兵衛さんが建てたもの。
大正初期に中村米吉さんが譲り受け、昭和49年に中村家から町に寄贈されたのだそうです。
家屋は、越前石を積み上げた土台に総ヒノキアスナロ(ヒバ)の切妻造り二階建て。
母屋から海側まで文庫倉、下の倉、ハネダシまで続く通り庭様式で、当時の問屋建築の代表的な造りなのだそうです。

 倉の内部は資料館になっていて、北前船やニシン漁の様子が良くわかりました。
通りに面している入り口から入ったところが帳場・・・3人の首代が座れる帳場は珍しいそうで、そのわきに番頭さんの座る帳場が。
帳場や番頭席に座らせていただくと、通りの様子がとても良く見え、一時ですが当主気分を味わえました。

 旧中村家前の坂を上がると旧檜山郡役所。(北海道指定有形文化財)
延宝6年(1678年)江差地方に自生するヒノキアスナロの伐採取締番所として檜山番所が上ノ国から江差に移転。
その後江差の行政経済を統括する藩府として檜山奉行所と改称。

 現在の建物は明治22年に建てられ、道内唯一現存する郡役所庁舎。全国にも25棟しか残っていない貴重な建物のひとつとのこと。
江差町郷土資料館となっています。
平成8年修復工事がなされた際、壁下から華麗な布クロスが発見され、関係者を驚かせたそうです。
この布クロスは京都で作られている「かしま織り」で一番古いもので1882年のもの・・・100年以上も前のものだったことが分かったとのこと。
当時のものと全く同じものを再現して、13種もの花柄などの布が各室内の壁に貼られています。
当時としては珍しいものと高い評価を受けているとのことです。 現代にも通用する本当に素晴らしい柄のクロスでした。

 最後は国道沿いにある江差追分会館へ。 ( 「姥神大神宮渡御祭と江差追分」として北海道遺産 )
入り口で江差町のゆるキャラ 「 しげっち 」 がお出迎え。
追分資料室、追分道場、伝習演示室、100畳敷ホール等々あり、歴代の江差追分全国大会の優勝者や師匠たちの歌声を聞けたり、巨大スクリーンで臨場感に溢れた姥神大神宮渡御祭の映像を鑑賞できたり、とても充実した機能を備えていました。

 「かも〜め〜」の歌いだしで始まる追分節は、江戸時代から信州中仙道で歌われた馬子唄がルーツとされ、200年ほど前北前船により運ばれて来、更にこの地で独特の音調を持つ江差追分を誕生させたと言われています。
 昭和38年から振興、継承を目的として、毎年9月に江差町で江差追分全国大会が開かれ、全国の予選を勝ち抜いてきた出場者が日本一をめざし熱唱しています。
美声でなくては歌えない・・・という歌ではなく、声の高い人、枯れた人、太い人それぞれにそれぞれの歌があるのだとか。
歌う人の人生が節の中に自然に浮かび上がって聞こえる・・・歌うほどに奥が深いのだそうです。

 館を出るとき、先ほど受付にいらしたお兄さんが尺八の練習をしていました。まだ習い初めて数か月とのことでした。
この館に勤務する方は皆さん尺八を吹くことができるそうです。

 かごめ島巡りや海洋丸等々まだまだ見どころいっぱいなのですが、日帰りでしたので今回はここまでとして江差町駅へ。
駅ではカメラを構えた鉄道ファンが沢山いました。
木古内駅から特急列車に乗り換えて函館へ。

 函館駅到着後はいったんホテルにより、入浴準備をし路面電車で谷地頭温泉へ。
函館山の麓にある大きな公営の温泉です。まるで体育館のように広い浴室にいくつもの浴槽があり、露天風呂もヒノキの香りがよく立派です。
2万歩を少し切るほど精力的に歩きましたので、いい温泉に浸りゆっくり疲れをほぐしました。
帰りはまた路面電車に乗り十字街で下車。
ライトアップが美しい赤れんが倉庫群で夕食をとり、ショッピングモールをブラブラめぐりしホテルへ。

 深い歴史に触れるとてもいい旅でした。

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